求人・採用
・どうせハローワークで求人票を登録しても職人から応募なんてこないよ・・・
・ハローワークの求人票をみて応募してくる職人は、どうせ採用しにくい人ばかりでしょ・・・
・求人ポータルサイトで有料広告を出しても応募がこないんだから、ハローワークは期待できないだろうな・・・
このように、職人の募集をしている中小建設会社では、「ハローワークに求人票を登録して応募を獲得する」ことに対して、懐疑的な社長さんもいらっしゃるでしょう。
正直に言って、業界平均を大きく上回るような給料にでもしない限り、ハローワーク経由でたくさんの応募を獲得することは不可能です。また、1ヶ月・2ヶ月といった短期間で応募を獲得することも不可能に近いです。しかし、通年採用で年間に数名採用できれば良いのであれば、ハローワークは貴重な求人ツールになります。
この数年、厚生労働省がハローワークを通じた中小企業の人材採用を支援しようと、ハローワークのシステムを立て続けにリニューアルしています。直近では2021年9月21日にハローワークインターネットに大幅な機能追加が実施され、求職者がより利用しやすく、応募しやすくなりましたので、ハローワークを使わないという手はありません。
しかし、いくらハローワークの利便性が高くなっても、職人が見て応募したいと思う求人票になっていなければ応募は来ません。この記事では、「この会社ちょっと気になる。もっと詳しく知りたい。」とか「この会社は自分にピッタリだ。この会社に入りたい!」と思ってもらえる求人票作成のポイントをお伝えします。
この記事ではハローワークを活用して職人の中途採用をする場合を想定して説明を記載していきますが、新卒採用をする場合でも基本となる考え方は同じです。新卒採用に特化した方法は、建設業が職人を新卒採用するのに必要な求人方法3ステップとは?をお読みください。
ハローワークの求人票の書き方をみていく前に、とても重要なことがあります。
それは、あなたの会社の魅力(特徴でも強みでも用語は何でも構いません)を棚卸することです。仕事を探している職人にとって、あなたの会社の魅力はなんでしょうか?あなたの会社の他社との違いはなんでしょうか?
「うちは小さな会社だから、魅力とか違いと言われても特にないよ。そんなのある程度大きな会社にならないとないでしょ。」このようにおっしゃる建設業の社長に多くお会いしてきました。
でも、いろいろお話をうかがうと、必ず、その会社なりの魅力は見つかります。「嘘つけ!」と思うかもしれませんが、本当です。もし、本当になんの魅力もないと考えているなら、職人から応募がこないのは仕方がないです。自分の会社にも必ず魅力があるんだと信じてください。
魅力が見つからない最大の理由は、「職人の仕事を探している人」とざっくりまとめてしまうからです。実際のところ、会社によってどんな人が欲しいかは異なります。欲しい人が変われば、その人にとって響く魅力は変わってきます。
ここがポイントです。魅力を見つけるためには、まず欲しい人を具体的にする必要があります。
あなたの会社の魅力や特徴を棚卸するときの注意点があります。
それは社長や求人・採用担当だけで棚卸しをしないことです。これは超重要です。たいてい、社長や事務の人間と現場の職人が考えている魅力は違うものだからです。
アンケートをとってもいいですが、職人は面倒だと思って適当に書いてしまうケースが多いので、直接話を聞く方が良いです。
・「なんでうちの会社に入ったの?」
・「なんでやめずにうちの会社で働いてくれているの?」
・「知り合いで職人の仕事を探している人がいたら、うちの会社をなんて言ってすすめる?」
こんな感じの質問をしてください。
答えを聞いたら追加で質問してください。
「それだけ?他にもない?」
「そっすね。なんかあるかな。あ、魅力なのかどうかわかんないすけど、〇〇っすかね。」一度答えに詰まって、そのあとに出てきた答えが、その職人が感じている魅力の本音です。この〇〇に入ってくる言葉は、それまでに出てきた答えの言葉よりも、生々しい言葉で感情に訴える言葉になります。この言葉を探し当てましょう!
で、この話を誰に聞くかが大切です。まず欲しい人を決めるのが大切と書きました。今の自社の職人の中で言うとAさんかな・・・という感じでいいので、社内で誰かに決めてしまいましょう。そして、その決めた人から話を聞くのです。
次に、ハローワークでも、その他の求人媒体でも共通して必要なことがあります。
それは、求職者である職人が「どのような不安や悩みを持っているか?」「入社後の将来にどのような願望を持っているか?」を把握することです。
職人に限りませんが人が転職を考えるときは、今の会社でなにかしらの問題を抱えているのです。仕事の内容かもしれないですし、人間関係かもしれないですし、給与や福利厚生などの条件かもしれません。このまま働いていてもやりたい仕事ができない、技術がこれ以上伸ばせられない、将来的に独立したいけど認めてもらえないなど、描いた将来が手に入らないからかもしれません。
ここをしっかりリサーチしておかないと、表面的な求人票の書き方を真似しても応募はきません。もし応募が来て採用できたとしても、思っていたのと違ったといってすぐに辞められてしまいます。転職してきた職人の離職率が高い会社の多くは、表面的なテクニックを使っていることが大きな原因の1つになっています。
さあ、ハローワークの求人票を書く準備ができました。いよいよ、具体的な求人票の書き方です。
求人票は、「求職者である職人の不安を取り除き、入社後の未来にワクワクしてもらう」ように書いていきます。具体的には6つの記入欄の書き方になります。
まず、職種欄です。おそらく、鳶工、鉄筋工、型枠工、解体工、左官・・・のようにいわゆる職種名だけを書いていると思います。しかし、職種名だけだともったいないです。
たとえば、
・大手ゼネコンの現場での工事を売りにしているなら、「大手ゼネコン現場を中心に働く鉄筋工」
・国の重要文化財の工事を売りにしているなら、「国の重要文化財の工事に携われる鳶工」
みたいな書き方です。
ハローワークの求人票の書き方を解説しているサイトでも、ほとんど職種欄は触れていませんが、誇張や嘘でない限り基本的に自由に記入できます。職種欄も差を付けられますので、意識した書き方が必要です。もし誇張と読み取れるような場合、ハローワークの職員から指摘がありますので、まずは売りが明確になる職種名を記載するようにしましょう。
ハローワークの求人票の3大重要項目の1つ目です。
ハローワークの求人票の仕事の内容欄は最大360文字記入できます。多くの建設業の会社の求人票はこの360文字をムダに使っています。わざわざハローワークが求人申込書の記入例に「文字数が多いほど応募者が多いという調査もあります」と書いてくれています。それだけこの360文字を有効に活用した書き方をしなければならないのです。
繰り返しになりますが、ポイントは不安や悩みを取り除き、入社後のワクワクを感じてもらえる書き方にすることです。
建設現場での足場の組立、解体及び鉄骨建て方
みたいな書き方ではダメです。
東京、埼玉、千葉の1都2県で、主にビルやマンション、商業施設など大規模物件の建設現場での足場の組立、解体および鉄骨建て方をします。聞いたことがあるような有名な物件が多いので、家族に自分が建設に関わったと自慢できる現場での仕事となります。安全面に関しては、職人が安心、安全、快適に作業できるよう最新の足場技術、足場資材を積極的に取り入れています。また、職長が中心となって、見て覚えろではなく、きちんとスキルを継承できるよう、スキル習得に関するキャリアプランを作成しています。もちろん、スキルアップのための資格習得費用は会社が全額負担しますので、積極的にチャレンジして欲しいです。そんな大規模物件の現場に関わりながら、最新の足場技術で安心、安全、快適に作業ができ、確実にスキルアップもできる仕事です。
みたいな書き方です。
「鳶の仕事は続けたいけど、今の会社だと安全面が心配。」と思っている人や「職人特有の、技術は見て盗め、で全然教えてくれないのがいい加減嫌になってきた。」と思っている職人が見たら、魅力的に感じますよね。
ハローワークの求人票の3大重要項目の2つ目です。
求人票には記載されませんが、ハローワークインターネットとハローワーク内のPCでは表示されるので、しっかり記入しましょう。意外と求人票に記載されないからという理由で書かなかったり、よく考えずに適当に書いてしまう会社があります。本当にもったいないので、しっかり考えて書きましょう!
ハローワークの求人票の事業所からのメッセージ欄は最大600文字記入できます。600文字というのは結構なボリュームです。項目として「求人PR情報」にあるくらいなので、ここで600文字を使って全力でPRをして欲しいというのがハローワークの意図です。
ここで書くべきは、社長の想いと会社の魅力の2つです。PR情報なので、会社の魅力を箇条書きでいくつか書いているだけの建設会社が多いですが、これは非常にもったいないです。
600文字というのは、つまらない文章だと読む気がしないボリュームです。ましてや職人なので、活字を読むのが嫌いという方も多いので、文章の書き方を注意しないといけません。ではどうすればいいかというと「社長の想い」です。社長の想い+会社の魅力にすることで、無味乾燥な魅力の箇条書きとは一線を画す内容になります。
・人材育成に力をいれており、教育体制が充実しています。
・職人同士仲が良く、社員旅行やBBQなど社内行事も多いです。
・遠方の現場はないので、朝早い時間に不安がある人でも大丈夫です。
箇条書きタイプです。実際は文字数を埋めようと10個くらい書いている会社が多いですが、はっきり言って個数に意味はありません。何のPRにもならないようなことを書いていると、むしろ逆効果になります。
代表取締役の●●です。私は18歳のときにこの世界に入りました。父親が鳶職人で、小さい頃からニッカポッカを着ている父親を見て格好いいな、俺も大きくなったら父親みたいな仕事がしたいと思っていました。高校を卒業して入社した当初は、本当に大変でした。3K職場という言葉があるように、建設現場の仕事は「きつい、汚い、危険」で、特に体力的に結構厳しかったのを今でも覚えています。真夏の炎天下の中での仕事とか。職長は厳しくて、なにを聞いても「俺たちも先輩を見て覚えたんだよ!」と一蹴されて、、、でも頑張って技術を習得しました。絶対に将来独立して一国一城の主になると心に決めて入社したから。 そして200X年当社を設立しました。会社を作ったときから決めていたのは、自分が嫌だったことは社員にはさせないこと。業界の悪いイメージを少しでも払拭すること。やっぱり建設業の仕事は面白いと思うんです。だから、働きやすい職場を作って、10代、20代の若い人が、友達から「仕事何しているの?」と聞かれて、「鳶だよ、格好いいだろう?」と誇れるような会社にしたいのです。そのような会社にするために、 ・元請けと徹底交渉して無理な工期は請けない体制の確立 ・徒弟制度による職人一人ひとりのスキルアップのサポート ・隔週週休二日制の採用 といったことをやっています。ここには書ききれないこともあります。あなたも入社したらどんどん提案して欲しいです。
「なんか今の会社はほったらかしで、だれかに聞ける空気でもない。先輩は怖いし。やり方を教わるのに毎回気が疲れる」「仕方がないのかもしれないけど元請けの顔色ばかりうかがっていて、現場のことなんて考えていない工期にうんざりしている」といった人は興味・関心をもってくれるはずです。
ハローワークの求人票の3大重要項目の3つ目です。
ハローワークの求人票の求人に関する特記事項欄も最大600文字記入できます。こちらは項目として「選考方法」にあり、UIJターン歓迎、外国人雇用実績ありの2つのチェックボックスがあるくらいなので、基本的には選考に関わることでの特記事項の位置付けになります。
しかし、そのような内容でなくても「仕事の内容」と「事業者からのメッセージ」の2つで書けなかった書きたいことがあれば、特記事項で書きましょう。記入例でいうところの採用にあたって参考となる情報に分類される可能性が高いからです。職種欄と同じで、もし記載が不適切であればハローワークの職員が教えてくれるので大丈夫です。
・制服は貸与します。
・社員寮空き有ります。
・賃金の支払いは当月末です。
・20歳~64歳まで幅広い年齢層が働いています。
「仕事の内容」と「事業者からのメッセージ」と比べると書きにくい項目ではあります。そうだとしても、もっと具体的なことを伝えないと求職者にとって知りたい情報になりません。
・モデル年収 入社3年目鳶職 月収250,000円(残業X時間)、入社20年目鳶職長 月収480,000円
・令和3年度一級とび技能士に〇名、建築物等の鉄骨組立て等作業主任者技能講習〇名、など資格取得支援あり。
・独身寮完備してます。入社決定後、すぐ入寮できます。
・プロのデザイナーが作成した格好いいニッカポッカを支給します。その他道具も貸与します。
・大規模建設現場が多いため、短期間での現場の移動が比較的少ないです。
・昨年度は中途採用1名、新卒1名入社しました。
・働き方改革を行っており、来年度から隔週週休二日制と完全週休二日制を選択できるようにします。
・女性活躍が叫ばれる中、当社初の女性の鳶を積極的に募集しています。
職人の求職者にとって魅力に感じるものがあれば、列挙しましょう。
求人申し込みだけしっかり書いて、事業所登録の手を抜いてはダメです。
事業所登録には「会社の特徴」欄があります。最大90文字ですので、重要項目と比べると文字数が少ないので、そんなに力を入れなくても良いかもと思ってしまうかもしれませんが、文字数は関係ありません。何と言っても「会社の特徴」という欄ですから、求職者の人もそういう目で読みます。
鳶工事業を通じて地域の皆様に貢献できるよう、安心・安全な工事、環境への配慮を大切にしています。社員旅行やイベントが充実していて社員同士仲良くチームワーク抜群です。
ありがちなのは、このような概念的な内容です。社会にどうやって貢献したいとか、お客様に対してどんな想いで仕事をしているとか。また、特徴も当たり障りのないチームワークなどの抽象的なことを書く会社が多いです。こういった内容では書いてあっても読み飛ばされます。
創業50年超。民間と公共工事のバランス良く安定した経営で仕事が切れません。よい仕事をするために社員の健康と教育に力を入れると共に、頑張りをしっかり給与で応える評価制度があります。
90文字というのは思った以上に少ないです。あれもこれも書くことはできません。求職者から見たときに会社の特徴として具体的な内容を優先順位が高い順番に入れましょう。一つでも求職者の興味・関心に引っかかれば良いです。それをきっかけに、もう一度求人票の表面を見直してくれることもあります。
建設業がハローワーク経由で職人から求人応募がくるための求人票の書き方をお伝えしてきました。
まずは、求人票の書き方というノウハウ以前の内容として、「自社の魅力を棚卸しすること」「職人の求職者の抱えている不安や願望を知ること」。この2つが無ければ、ノウハウは活かせないと再度、肝に銘じてください。
ハローワークの求人票の書き方のポイントは、全部で4つの記入欄で活用します。
・職種欄の書き方
・仕事の内容欄の書き方
・事業者からのメッセージ欄の書き方
・求人に関する特記事項欄の書き方
それぞれの記入欄を1つずつ見るのではなく、欲しい人材はどんな職人か決め、その人材が抱えている不安や願望はなにか?不安を解消し、願望の達成につながる自社の魅力はなにか?を整理して書くと、求人応募がくる求人票になります。
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・建設業界の市場規模と将来予測、そして中小建設業の課題と対策
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