綺麗すぎる採用(求人)サイトのデザインは面接のドタキャンを増やす

求人・採用

あるデザイナーさんから受けた質問です。

「社員が少ない小さい会社でも、大企業と思われるようなデザインにすれば、応募者は集まるんじゃないですか?」

デザイナーさんのこの発言、あなたはどのように考えますか?

もうひとつ。今度は私の経験です。

大田区内にある小さな建設会社に提案で訪問しときのことです。弊社にご連絡をいただいたときに、まず「どんな会社なのかな?」「採用ページはどんな内容が書いてあるかな?」と思って事前に検索をしました。おそらく、問い合わせを受けたら、あなたも同じように検索して情報収集したり、アクセス方法を確認したりするはずです。

実際に私が検索したときに、トップページのヘッダー画像(ページの一番上にある大きな画像)にすごく綺麗で立派な3階建てくらいのビルが載っていました。ただ細かくは分からなかったので、ビル一棟全部なのか、その中の一部の区画だけなのかは分からないものの、外見はそういう建物なんだと思って訪問しました。

ですが、実際に訪問してみると、プレハブ造りの2階建ての建物だったのです!!

本当にここかな?でも、看板に書いてある会社名は合っているし、住所も合っているから、間違いないと確信しました。

大事なのはここではなく。私が到着する数十メートル手前で一人の若者とすれ違ったのです。彼は電話していました。「なんかすげー会社の写真だったのによ、面接で行ったらおんぼろだったんだよ。ふざけんなと思って面接受けないでこれからパチンコ行くわ。(後は距離が離れて聞こえず・・・)」

これは悲劇です。採用担当の人だって面接の時間を確保して待っていただろうし、応募した人だって無駄足踏んだと思うでしょう。お互いに不幸です。

中小企業が大企業に思えるデザインの採用サイトは不要

冒頭のデザイナーのように、求人企業に対してホームページの提案をするときに、立派に見えることを目的にする制作会社はあります。気持ちは分かります。求人企業にしてもおんぼろに見えるより、綺麗に見えた方が嬉しいですから。

今の時代、小さい会社でも、いくらでも綺麗な見た目のホームページを作ることができます。

でも、ヘッダー画像だけの話ではなく、そもそも中小企業が大企業のように思えるデザインにする必要があるでしょうか?

中小企業は中小企業としての魅力や良さ、中小企業の中でも自社の魅力や良さが伝わることが大切ではないでしょうか?大企業のように思えるようにするというのは、大企業と採用で競合することを想定していることを意味します。

求人企業としては、そんなことはないはずです。

勘違いしないで欲しいのは、綺麗な、洗練したデザインの採用サイト自体を否定しているのではないということです。大企業のように思えるデザインにする、ということを問題にしているのです。

別に大企業のように思えなくてもいいのです。綺麗で洗練したデザインにすればいいのです。綺麗で洗練したデザインとはなにか?というのはあるのですが、その前に、デザインに関して誤った思い込みをもっている人が多くいるため、誤った思い込みがあるとどんな問題が起きるかお伝えします。

ホームページのデザインに関する誤った思い込みが起こす問題とは?

ホームページのデザインに関しては、「デザインが綺麗なホームページを作れば売れる!応募が集まる!」というような思い込みがあります。これは非常に多いです。

綺麗なホームページであればそれに越したことはありませんが、綺麗なデザインという理由で集客できたり、応募が来ることはありません。大切なのは、デザインよりも誰に何をどのように伝えるかです。

「誰に」が決まらなければ、「何をどのように伝えるか」決まりません。

デザインに余計な時間と費用を投じるなら、このような中身の検討に時間を割くべきです。

ここを疎かにしてデザインばかりに注力してしまうと、求職者と求人企業にギャップを生み、ミスマッチを起こします。その結果、応募が来たと思っても面接に来なかったり、ようやく採用できたと思ってもすぐに退職されてしまう、という問題が起こります。

採用に関して言えば、社員にとって魅力的な職場を作るために何ができるか?を考えるべきです。

実際に採用サイトを通じて成果を出しているのは、そうした会社作り、職場作りをしている会社です。そうしなければ、1、2年以内に離職されてしまって、採用コストばかりかかってしまうという事態に陥るからです。

デザインを過度に気にすることは、本質を捉えている社長さんは、「採用サイトは出来るだけシンプルなデザインにしてください」とおっしゃいます。

デザインはターゲットによって変わるもの

会社規模のミスマッチだけでなく、例えば、次の例はどうでしょうか?訪問看護ステーションが20代前半から半ばの看護師が欲しい場合と運送会社が30代後半から40代前半のトラックドライバーが欲しい場合。この2つのケースで同じようなデザインで作るのが良いでしょうか?

「違います」!と即答されると思います。ここまではっきり対象となる欲しい人が違うと、おかしいと分かります。

では、次の例ならどうでしょうか?運送会社が同業から経験者の30代のトラックドライバーが欲しい場合と他業界・他業種から心機一転、転職をしたいと思っている未経験のトラックドライバーが欲しい場合。

どちらも運送会社だから、似たようなデザインでいいのでは?と思う方もいるでしょう。業界に対する知識がないとなかなか判断が付かないと思いますが、やっぱり同じでない方が良いのです。

なぜなら、デザインとは配色や使用する画像、レイアウト、文字の大きさなどの視覚的な情報すべてを含むからです。

求職者のことを知らなければ、デザイン一つをとっても何が効果的か判断できないのです。

シンプルなデザインの採用サイトが良いという社長が成果が出ているとお伝えしましたが、配色やレイアウトとして余白の取り方とか、文字の大きさはターゲットによってかわっ来るのです。

採用サイトで求職者に嘘や誇張をするのは無意味

デザインだけでなく、採用サイトでよくあるのが<b>嘘とまで言えないが明らかに誇張でしょう?</b>というメッセージです。

喉から手が出るほどに人手が足りなくてすぐにでも採用したい、その気持ちは分かります。しかし、嘘はいけません。誇張もよくありません。本質的には、誇張しなければ求職者が魅力を感じないことが問題です。社員の働く意欲・モチベーションを高めるような取組みや制度、職場環境を作ることで、魅力を感じてもらうのが正しいアプローチです。

でも、中小企業にとってはそう簡単に魅力的な制度や環境を準備することはできないのも事実です。もちろん、難しくても実現するために努力をしていく必要はあります。

事実を求職者の感情に響くように伝えることが大切です。

仮に誇張したメッセージを見て魅力を感じて応募する人がいても、面接で見抜かれたり、入社してばれてしまったり、結果、インターネット上に悪い口コミを書かれたりして企業イメージを棄損する可能性があります。

まとめ

採用サイトを作るときは、デザインに注意しないとせっかく設定した面接を無断でキャンセルされたり、そもそも応募が来ないリスクがあることをお伝えしました。

採用して長く働いてもらうことを考えると、勝負すべきは会社の中身です。デザインで興味を惹いて仮に入社してもらっても3年以内離職率を高めてしまうだけです。

自社が欲しい人材を明確にし、その人材にとって見やすい、分かりやすいデザインとは何か?を考え、嘘や誇張のない採用サイトを作ることが定着率の高い会社を作ることに繋がっていきます。

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