求人・採用
求人をするときに、入れるべきコンテンツとして「先輩社員の声」があります。実際に、求人情報誌や求人ポータルサイトの求人広告を見ても、その多くに「先輩社員の声」が入っています。
しかし、多くの場合、有効に活用できていません。求人募集で一般的に入れるべき項目だからという理由で入れている会社が多いです。
どのようなコンテンツでも同じですが、ただ「先輩社員の声」が載っていれば良いというものではありません。載っていて薬にも毒にもならないならまだ良いですが、最悪、マイナスの影響を与えてしまう可能性もあります。ですから、何のために「先輩社員の声」を載せるのか?その目的から考えなければいけません。
あなたは、どんな目的だと思いますか?
そして、どんな先輩社員の声を載せれば良いと思いますか?
あなたの会社の求人に応募するかどうか検討している人は、、、
求人応募するにあたって、必ず何かしらの不安や心配、悩みを抱えています。
あなたが今の会社に入社するに至った経緯を振り返ってください。
いくつかの会社に応募したと思いますが、何の不安や心配、悩みもなく、一切躊躇することなく応募しましたか?
新卒の場合は、稀にいます。。。とにかく気になる会社に手あたり次第応募しました!という人が。そういった人でも、いざ内定をもらったときに、その会社に入社するか、内定辞退をして他に応募している会社にするか、この段階では色々と悩むはずです。
色々と悩んだ末に、本人が納得して、この会社で頑張ろう!と思って入ってくれた方がお互いにとってハッピーですしね。
私は転職経験がありますが、中途採用の場合はめちゃくちゃ悩みます。
多くの場合は、今勤めている会社に何かしらの不満や不安があります。これは決してネガティブなものばかりではなく、もっと〇〇になりたいというポジティブな願望からくるものもあります。
もちろん、中にはリストラや会社の倒産でやむなく転職せざるを得ない人もいます。
ネガティブな要因でも、ポジティブな要因でも、やむにやまれぬ外的な要因であれ、転職を考える人は、現状の不満が本当にこの会社で解消できるか?今の会社と同じように将来業績不振にならないか?、、、いろんなことを考えながら転職先を探しています。そして何より、とても慎重になっていて、簡単に書いてあることを信用してくれません。
このように猜疑心を持ちながら転職先を探している人に対して、その不安や心配、悩み、心の葛藤を解消するための1つのコンテンツとして、先輩社員の声を使うのです。
ここで重要なのは・・・
そもそも、求職者の不安や心配、悩み、葛藤、応募するかどうか逡巡するポイント、、、といったことが分からなければ、効果のある「先輩社員の声」を作ることはできないということです。
いわゆるビフォーアフターです。
・入社前にどんな不安や心配、悩みを抱えていたのか?
・今はどうなのか?解消されたのか?
・それは何がきっかけで解消されたのか?
これをストーリーで伝えてください。
中には、ほとんど解消されているけど、一部解消できない不安や悩みがある、という社員もいるでしょう。場合によっては、そうした声も使うことでよりリアリティを感じてもらうことができます。もちろん、この先解消できると思えていること、そう思えている理由を声の中に入れる必要があります。
具体的なイメージをもってもらうために、2つ例をあげます。
こんな悩みをもって営業に応募する文系学生が多くいますよね?
『文系だから営業職の募集がほとんど。だからやむを得ず営業職で応募した。でも、本当は自分には営業は向いていないと思っている。なぜなら、自分から積極的に話すタイプではないし、友達だって多い方ではない。初めて会う人には人見知りをしてしまう。そんな自分には、本当は内勤のデスクワークが向いていると思っている。』
このような学生がいたら、自分と同じような悩みを持って入社した先輩営業社員の声を興味をもって読むと思いませんか?
でも、「入社後の営業研修でロープレをたくさんやって不安がなくなりました!」みたいな誰でも書けそうな内容では、まったく不安が解消されることはなく、むしろ「本当かよ?」って疑いの目で見られてお終いです。
「最初は営業先を回るたびにストレスでブルーな気持ちになっていました。そのうち毎朝会社に出勤する電車に乗っているときにお腹がくだるようになってしまい、病院に行ったら過敏性腸症候群と診断されました。このままの生活を続けたら俺どうなっちゃうんだろう・・・毎日が不安でたまりませんでした。でもある日を境に状況は一変しました。最初に契約を取れたお客様から〇〇〇と言葉をかけてもらったのです。そうしたら、なんだか今までの自分の営業に対する考え方が変わって、肩の力が抜けたっていうか、純粋にお客様の役に立ちたい、どんな些細なことでもいいから相談してもらえるような人間になりたいって思うようになったのです。今でも辛いって思うことはありますが、営業が嫌という辛さではありません。お客さんの役に立ててない不甲斐なさみたいな辛さです。もっともっとお客様から信頼される人間になれるように日々頑張っています。そんな毎日に今はとても充実感を感じています。」というような、具体的な話があったらそれで不安が解消される可能性があります。
出産前に10年デザイナーの仕事をしていたから、入社したら何とかなりそうな気はする。でも、とはいえやはり不安。この6年でデザインの流行りも変わっているかもしれない。そもそも6年も仕事をしていないから、1日仕事をするリズムがつかめないかもしれない。それに、子供が小学校に入学したタイミングでの仕事復帰とはいえ、まだ小学1年生。早く帰らなければいけないし、病気になったら一人で薬を飲んで寝ててねとも言えない。
同じように育児明けで仕事を始めた人や子供が小さい人が、先輩社員の声として載っていたら、読みますよね?
でも、「アットホームな職場で先輩社員がすごく良くしてくれたので問題なく働けています。」みたいな抽象的な内容では、「本当に大丈夫かな・・・」と不安が解消されることはありません。
「入社して1ヶ月も経たないうちに、子どもがインフルエンザにかかってしまいました。面接のときに大丈夫だよと言われていたものの、実際に1週間近くいきなり仕事を休まないといけない状況に正直不安を感じました。でも、その不安はまったく必要ありませんでした。うちの会社は子育てをしながら女性が働ける職場作りに取り組んでいて、私以外に同じような環境から入社した人が他に5名いるんです。その人たちは皆今も働いていて、一緒に働きやすい職場になるようにしてきたそうです。だからチームリーダーはいつ休んでも大丈夫なように仕事の役割分担を考えてくれていて、チーム全体でフォローの体制を組んでくれていました。だから、心配しないでいいよ!早くお子さん良くなるといいね!って笑顔でチームメンバー全員が言ってくれたんです。心の底からホッとしたのを覚えています。今では在宅勤務の制度も整備されてきたので、さらに不安なく働けています。だから私みたいな人が入っても安心して働けます。」みたいな話があったら安心できる可能性があります。
同じような境遇、環境、背景の人の先輩社員の声の使い方次第で、応募数は明らかに変わってきます。しかし、これはテクニックにすぎません。
テクニックとは、きちんとした基礎・基盤があって初めて成立するものです。
ここでいう基礎とか基盤というのは、あなたの会社における取組みや制度(公式なものもあれば、非公式なものもあるでしょう)、環境、文化を指します。
つまり、応募を検討している人が「是非、この会社に応募したい!入社したい!」と思うように、自社で何ができるか?を考えることです。
・どうすれば、働きやすい職場になるか?
・どうすれば、社員が喜んで働けるか?
・会社としてできる取組みはないか?
といったことを考えることです。
ここで注意したのは、何でもかんでもやればよいというのではないことです。
・あなたの会社が欲しい、必要な人材とはどんな人でしょうか?
・その人が応募にあたって抱えている不安や心配、悩みは何でしょうか?
・それを解消するために自社ができる取組みは何でしょうか?
そうです・・・
繰り返しになりますが、出発点はどんな人が欲しいか、その人が抱えている不安や心配、悩みなのです。求職者の視点に立つことなのです。
先ほど、ビフォーアフターをきっかけを含めてストーリーで伝えると書きました。
これを社員の人に、先輩社員の声で使うから書いておいて、と渡しても書くのは難しいです。
文字で書くとしても、インタビュー形式で記入用紙を作る必要があります。しかし、一番は実際にインタビューをしながら動画で撮影することです。
インタビュアーの力量にもよりますが、やはり会話をする中での方が話し手としても自然とストーリーを伝えやすいです。それに、質問をされることで考え、「あ!実はこんなことが転機になっていたんだ!」と気付くことがあります。何より、その場で話しながら出てくる言葉だからこそ、真実味のある求職者の心に響く言葉になるのです。
あなたも経験がありませんか?
文字で書こうとすると、体裁を気にして、あーでもないこーでもないと何度も書き直してしまうことが。
これは、結局のところ使う言葉が一般化したり、美辞麗句になってしまって、他にもありそうな先輩社員の声になってしまうのです。
また、本当に楽しいことを話したり、充実していると表情に出てしまいませんか?
動画では表情が伝わるのもすごく良いです。
何を話しているかはもちろん重要です。でも、話している人の表情だけ見て、この会社は間違いない!と思う人がいるのも事実です。それだけ人の笑顔や充実感溢れる表情というのは大切なのです。
動画で先輩社員声を撮影する場合の注意点があります。
それは、事前打合せをしないことです。だいたい、こんなことを聞きますよ、程度を伝えるのにとどめてください。
文字化するときと同じでリアリティのない言葉になってしまうからです。質問されて考えている間であったり、その瞬間に考えて生まれる生の言葉に力があるのです。
中には、マイナスな発言が出てしまうのではないかと嫌がる方もいます。そうした方は、あとで編集してくださいと言われるのですが・・・編集はしなくて大丈夫です。仮に、多少のマイナスな受け答えがあっても、そこできちんと質問することです。そのマイナスがなくなるとどうなるのか?マイナスと感じていることを、どうしたら改善できるのか?それは誰かに相談できるのか?改善するために自分が会社のためにできることは何か?のように。
・会社視点での先輩社員の声は載せるだけ無意味
・求職者の立場に立って、求職者の不安や悩みを解消できるような先輩社員の声を載せる
・文字だけで載せるのではなく、インタビュー動画を載せるのが良い
・インタビュー動画では、出来事や事象だけを追うのではなく、その前後や背景に潜むストーリーを引き出す